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砂塵の記憶

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2009年 05月 21日

蒼き空に紅き御旗を23

 翌日。
 朝からこの見張り塔内、臨時13師団作戦本部は、沈んだ空気から始まった。
 ターリさんがクリエルさんの捜索を担当したいと、自ら進み出てくれた。
 夜通しで駆けずり回ってくれたようだが、成果は得られなかったようだ。
 結局、赤獅子騎士団全員が一睡もせず、朝を迎えることになった。









 ターリさんの報告が無いまま、団員達は小隊ごとに仮眠を取ることにした。

「フラッドさん。お休みになられないのですか?」

 スラグさんが眠たそうに眉間に皺を寄せながら話しかけてきた。

「大丈夫です。適当なところで休みますよ。スラグさんの方こそ、先に休んでください。
 今回の退避誘導、コトナリアさんとスラグさんが大変だったと聞きましたし」
「恐れ入ります。では、お先に仮眠を取らせてもらいますよ」

 見張り塔のメインフロアにハシゴがあり、そこを登れば仮眠室だ。
 スラグさんが無事に2階に上がったのを見送り、
 私はフロアに備え付けられていた椅子に座った。

 今回は、いろんな事が起きすぎた。
 少し、冷静に考えてみることにした。
 まず、グラハム氏が言っていた、「運命の指輪」のこと。
 その名前に心当たりは無い、が。
 シャンが宿っていた指輪……もしかしたら、アレのことかもしれない。
 しかし、シャンは願い事を3つ叶えるとは言ったが、指輪そのものは……。
 真鍮製の土台に、赤い石が嵌められている、安物の指輪だ。
 しかも、私はアレとおなじ物を見たことがある。
 露天商が売っていた、1つ200ギル程度の、子供向けのオモチャだ。
 懐かしい記憶も思い出された。
 そういえば、シャングリラに、指輪をプレゼントしたな……と。

「フラッドさん。ちょりっといいかな?」

 ターリさんが戻って来た。

「あ、はい。報告をお願いします」
「あいよ報告っ。
 昨夜、戦闘自体は西ロンフォール、アウトポスト西南で起こっていた模様。
 ただ……5分くらい剣戟の響きがあったくらいですぐに停戦。
 その後、戦闘していたと思われる双方、目撃証言無し。
 ウサギ君ネットワークと、アジャンタール・ワイズ氏の証言から」
「あじゃん……なんですって?(汗)」

 偉くご大層な名前が出てきたが、その名前に心当たりがさっぱりと無い。

「ああ。シマフクロウのアジャンタール氏です。
 森の中の出来事は、逐一記録しているフクロウ君ですよ」

 ターリさんはロンフォールの森に居る限り、無敵と言われている。
 その理由の一つとして、森の動物達との意思疎通が上げられる。
 様々な動物達が彼の元に集まり、働いていく。
 そのようなターリさんを、「ロンフォールの王」と呼ぶ者も少なくない。
 彼が動けば森が動く。ロンフォール内での情報も、手に取るように入手できるのだ。

「わかりました。報告、ありがとうございます」
「失礼します。フラッド隊長。至急報告したいことが」

 カイルさんが哨戒から帰還し、報告に入った。

「サンドリア内で情報収集しようとしたのですが……。
 サンドリア内、クリエル死亡の噂が蔓延しております。
 それと、グラハム氏が私設部隊を動かして、クリエルと交戦。
 赤獅子騎士団と敵対する可能性という趣旨の噂が流されているようです。
 憲兵隊の主力が、全サンドリア内で厳戒態勢並の人数で哨戒しています。
 グラハム氏は噂を否定していますが、サンドリア内の噂が強烈です。
 これなら彼はうかつに動けないでしょう」
「そうですか。すると、我々は反撃のための準備期間を得たことになりますね」
『こちらタートル。フラッドさん。聞こえるかい?』

 続々と情報が集まってきた。
 トリスタンさんがいるのはバストゥーク。
 外からのサンドリア動向を探って貰っている。

「はい。聞こえています」
『グラハム氏の奇行ってことで、かなりこっちでも話題になっているね。
 しかし、話の広がり方が尋常じゃないよコレ。
 だれかが意図的に情報を拡散させているとしか思えない』

 すると突然、ひどいノイズがリンクシェルから響いた。

『――流石赤獅子騎士団。情報のチェックと分析力、驚愕に値しますよ』

 聞いたことのない声がリンクシェルを通じてノイズ混じりに発せられる。

『――誰だお前……!』

 ドレッドさんが警戒と敵意の声で威嚇する。

『そうですね――クリエルとはいい金づる――もとい、
 共闘関係の者と名乗っておきます。』

 リストを急いで表示させる、が、調子が悪いのか、それとも別の要因か、
 「サーチに失敗しました」という旨のメッセージがリスト中に踊る。

『今回の噂、操作させていただきました。
 あなた方には、不利のない状況だと思います。
 近々、何かしらの動きはあると思います。
 よい商売になることをお祈りしていますよ』

 正体不明の主がそう言い捨てると、ノイズと共に気配も消えた。
 リストが表示された。
 名前はバグってしまい不明だが、
 むこうの現在位置、バストゥーク港区。

「敵か、味方か……今は少なくとも敵ではなさそうですが」

 懸案事項がまた一つ増えた。しかし、これにより、少し糸口が見えた。
 クリエルさんと共闘関係……つまり。
 今現在、クリエルさんがまだ生存している可能性は高い。
 先ほどの割り込み通信も、クリエルさんの指示である可能性が高いのだ。

「いちおう、ウィンダスのリンクシェル管理局に通報したよ。
 お役所仕事に何か出来るかはわからないけど、いちおう、ハッキングは違法だからね
 しかしこんな裏技駆使してくるなんて……一体何人がこの事件に関わって居るんだか」

 ふぅーっとアイーシャさんが溜め息を付きながら、お茶をわかしていた。

「はい。フラッドさん。クリエルさんほど美味く淹れられないけど」

 出されたのは、色の薄いサンドリアティーだった。
 緊張しっぱなしの私には、幾分か優しい香りに感じた。
 部屋の中に、カモミールの香りが、ほんのりと。

「グッキー、ジェイトン。サンドリアから帰還しました」

 二人が帰ってきた。彼らは、クリエルさんの最後の指令で、
 クリエルさんの部屋を掃除してきたらしい。
 ――遺品整理。そんな言葉がよぎったが、思考をカット。
 クリエルさんは生きている。きっと。
 それは、きっと信じなければならない事なんだろう。

「お帰りなさい。……どうでした?」

 すると、二人は顔を見合わせて、少し沈黙し。
 やがて、グッキーさんが一瞬瞳を閉じて、顔を上げてから、私を見つめた。

「部屋は異常ありませんでした。多少散らかっては居ましたが」

 此方に視線を合わせてくるグッキーさんだったが、
 私はもう一方……つまり、ジェイトンさんが気になった。
 先ほどから下を向いたまま、此方に視線を向けてくれない。
 ジェイトンさんのこの癖を、私は知っている。
 言いたくても、言えないことがあるときだ。
 言うときはどんな事でもハッキリと快活に喋るジェイトンさんだが。
 何かを胸に秘めるときは、頑なに口を割らない。
 そんなジェイトンさん達に、私が掛ける言葉はコレしかなかった。

「――わかりました。ありがとう。
今日は、二人とも休みなさい。仮眠室は空いているハズですから」

 ジェイトンさんは「えっ?」と言わんばかりに此方を見た。
 私は笑顔で頷き、「大丈夫ですよ」と一言かける。

「ジェイトンさん。もし、話せるときが来たら、話してください。
 きっと、その方がいいのでしょう。
 大丈夫です。この事件、きっと解決できます。時の流れと、自らの正義を信じましょう」

「ああ、やっぱりかなわないわね。フラッドさんゴメン。あとで、はなすわ」
 と、ジェイトンさんはやっと、頷いてくれた。
 私も頷くと、二人をハシゴに促した。
 私は、二人が仮眠室に辿り着いたのを確認し、少し、椅子の中で眠ることにした。

by creatle | 2009-05-21 04:48 | 外伝:蒼き空に紅き御旗を


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