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砂塵の記憶

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2008年 07月 16日

蒼き空に紅き御旗を ~19~

――
 昼も夜も分からないこの部屋で。
 でも、わたしはここから出て行くわけにはいかない。
 お世話になった人のため。
 大好きな人のために。
 一度、ソトに出ようと逃げ出したこともあった。
 その時は失敗。捕まってしまって。
 そのとき、私の代わりに罰を受けると進み出た人。
 幼い頃からずっと、私の世話をしてくれた人が。
 食事を運んでくれるとき、何時も泣きそうな顔をしているけど。
 わたしは大丈夫。
 ……でも、あの人に会いたい。
 考えた。その方法を。
 何日も考えた。食事を食べる暇も惜しんで考えた。
 何か。いまここにあるもので、何か出来ないかと。
 私の人生は死んでいる。
 死んで、初めて、生を求め、智を求めた。
 この部屋の住人は、わたしと、本と、本棚と、蝋燭たち。
 そう、ここは書庫なのだ。
 本は語らずとも、知を持っている。
 ならば、知識を引き出し、知恵を作ろう。
 何年も掛けて、すべての本を読破した。
 不安はあった。わたしに、何が出来るだろうかと。
 だが。

 ――――今のわたしは、この為だけに、生きている――――







 午前10時。赤獅子騎士団第13師団控え室。
 今ここで、第13師団全員を集め、緊急会議が開かれていた。

「そうですか……仕方はないと思います。
 それに、国家を作る一役となるのです。私たちは、喜んで送り出しますよ」

 スラグさんが笑顔で答えてくれた。
 事情を話したところ、私が一線から退くことは理解して貰えた。
 しかし、問題になったのは、団長の後継だった。

「しかし、フラッド隊長の代わり……つとまりますかね。
 正直、代わりを務めるほどの指揮能力や、
 統率力のある人物は我が隊には居ないと思いますが」

 クリエルさんが、ぼそりと呟くように発言した。
 正直、私の隊長解任に対して、一番難色を示したのが彼だった。

「ですが、私個人としても、この隊を解散したくは無いのです。
 私の能力を評価していただけるのはありがたいですが……」

 厳しい表情のクリエルさんに、グァルザングさんが声を掛けた。

「まぁクリさんの言いたいことはよく分かる。だけど。
 なんとかしなければならないってのも今の状況さ。
 と言うわけで提案です。
 流石に今までのワントップ体制は不可能なので。
 隊長代理と、補佐役を4人立てようと思うわけです。
 隊長代理に、コトナリアさん。
 補佐役に、スラグさん、ラキラさん、タートルさん、メビウスさんを。
 こういう布陣を考えているけど、どうだろう?」
「え……わ、私?」

 コトナリアさんが、急な指名で驚いていた。

「なるほど。隊長代理でコトナリアさんか。それならば賛同しよう」
「ちょ……クリさん……!」
「難関を陥落させたところで、みんなもどうだろう?」

 クリエルさんが妙に納得し、コトナリアさんが慌て、グァルザングさんがみんなに提案する。
 結局、決議はこのまま通り、コトナリア隊長代理と、第13師団の四天王が決定した。
 最後まで慌てていたコトナリアさんだったが、

「まぁいいよ。やってあげる。私も、この隊が大好きだからね」

 と、笑顔で了承してくれた。



 会議が終わり、そろそろ夕日が眩しくなりそうな廊下。
 そこで、クリエルさんと会った。

「フラッド隊長」
「クリエルさん。どうしました?」

 壁によりかかったまま、下の方を見ていたクリエルさんは少し沈黙するが、
すぐに口を開けた。

「私の中の隊長は、いつでもフラッドさんですよ」
「ありがとうございます。……コトナリアさんを、お願いしますよ」
「ええ。確かに承りました。それと」

 また、少し沈黙。
 そして決意したかのように、私の目をしっかりと見て、クリエルさんは言った。

「フラッドさんが如何なる状況に置かれても、私は、フラッド隊長の味方ですよ。
 騎士の誓いとして」
「ええ。誓い、確かに受け取りました」

 そして、クリエルさんはニッと笑って、敬礼した。

「では、ご活躍を期待しております。フラッド・クレセントウッド男爵殿」
「ええ。お互いに。クリエルさん」

 そして、私たちは、茜色の廊下ですれ違った。

by creatle | 2008-07-16 02:08 | 外伝:蒼き空に紅き御旗を


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