2007年 08月 07日
少し離れた位置で、強化魔法の詠唱を開始する。 そうしている間に、各部隊が到着する。 特殊部隊単体では攻撃は仕掛けてこない。 あくまで、獣人旗の呪いが掛かっている者しか狙ってこないからだ。 しかし、偶発的な事故や、他の獣人の襲撃なども懸念はあり、警戒は必要だ。 「今回、遠征軍参加が初めての方がいらっしゃいますので、簡単に説明します。 獣人特殊部隊は4人編成での行動が多く、数としては圧倒的に有利です。 しかし、各兵、我々と同等、もしくはそれ以上の身体能力と技能を持っています。 獣人の呪いにより身体能力を抑えられている以上、一対一は不利です。 よって、一対多数の集中攻撃戦術を執ります。 戦闘する個体順はこちらから指示します。 基本的に、メビウス小隊が攻撃した敵を狙い撃ちしてください」 リンクシェルに通して説明を開始する。 その間に、各部隊が編隊を開始する。 盾役を中心に、1盾:2前衛:3後衛の、6人編成を取る。 トライアングルシフトと、呼んでいる陣形だ。 後衛を多く含んでいる13師団だからこそ有効な陣形だ。 トライアングルシフトにはもう一つバリエーションがあり、 3前衛:2中衛:1後衛というものがある。 コレは前衛が多い12師団が得意とする陣形で、アサルトシフトと俗に言われている。 編成が完成し、準備も万端。 「では……触れますよ」 獣人旗に触れると、黒い霧が辺りを包み、黒い影が4つ浮かぶ。 浮かび上がったのは大きな甲羅に短い手足。 片手剣と盾、大剣、杖、短剣にて突発詠唱! 「戦闘開始!敵種別確認、クゥダフ! 装備と戦術により、パラディン、暗黒騎士、白魔道士、赤魔道士と判断!」 『メビウス小隊より全隊へ!最左翼のクゥダフを暗黒騎士と断定。 攻撃に移ります!』 「本隊、メビウス小隊に続いてください! コトナリア魔法兵団!他クゥダフを足止め願います!」 メビウス小隊が大剣を持ったクゥダフに攻撃を仕掛ける。 それと同時に、魔法兵団から睡眠魔法スリプルや、呪縛魔法バインドが飛び出す。 続いてクリエルさんが暗黒クゥダフの後ろを取り、意識を掻き乱す。 そして間髪入れず、タートルさんがクリエルさんの後ろから、 クリエルさんをすり抜けるように、華麗な妙技で短剣をクゥダフに突き刺す。 クゥダフはクリエルさんの強烈な一撃だと思ったのか、クリエルさんを見据える。 が、クリエルさんがクゥダフに目を合わせ、ニヤリと独特の笑みを浮かべた瞬間、 クゥダフが途端に、ひるみ始めた。 その隙を団員が見逃すハズがなく、反撃の暇も与えぬまま、暗黒クゥダフ轟沈! 「次は赤魔道士です!」 と叫んだその瞬間、魔法兵団の足止めで動けなくなっている赤魔道士クゥダフの背後に、 大斧を構えた重戦士カイルが! 「シュトルムヴィントぉ!」 一度薙ぎ払い、その上で間髪入れずに振り下ろし! 軌道に風が乗り、竜巻を起こす、疾風の名を冠したその御技! 赤魔道士クゥダフ、一撃で撃沈! 余裕じゃないか。と思った矢先だった。 『フラッドさん!魔法兵団ピンチです!っていうか増援きた!』 コトナリアさんの必死な叫びが、リンクシェルから聞こえたのだ。 振り向けば、十数体のクゥダフが取り囲んでいた。 コトナリア魔法兵団は足止めに躍起になっているが、如何せん数が多すぎる。 『フラッド隊長!まずい!挟み撃ちされてる!』 カイルさんの声が状況を伝える。 やっと、自分がとんでもないピンチに陥っていることを自覚した。 今まで増援なんていう戦術は無かったハズだけど……! 今はそんなことは言っていられない。 途端に、増援のクゥダフが一斉に何かをこちらに投擲した。 ……爆弾だ! ドォーン!ドォーン!と 爆弾が破裂する音が響きわたる。 通称、鉱石爆弾。 鉄鉱石の中に火薬を詰め、衝撃により爆発させる、簡易手榴弾。 爆発時に、鉄鉱石の堅い破片が飛び散り、広範囲に矢のような被害を与える。 物が小さいため、一つの威力はさほどでもないが、ここまで集まるとマズイ! 「魔法兵団、私の後ろへ!とにかく移動してください!詠唱はその後で!」 その場から離れる指示を出し、何とか陣を張る。 負傷した魔法兵団はのろのろと移動を開始する。 元々近接戦や物理被害に弱い魔法兵団だ。 あんなものを投げられたら、被害が甚大すぎる。 「ケアル!ケアル!みんながんばれケアルガ!」 シャンが遙か上空から回復魔法を詠唱していた。 しかし、元々の魔力はたかが知れている。 だが、魔法兵団の首の皮はつながったのは幸いだ。 ピンチだ。コレはマズイ。 指示を考えあぐねた、その時だった。 「“視界に収まる我に仇為す者たちよ。力無くしひれ伏すがいい……”」 突然、スラグさんが呟いた。 声が妙に響く。途端、クゥダフ陣営の足が止まった。 そのまま、跪くように……クゥダフ達は膝から崩れた。 そして、スラグさんの傷が消えていく。 暗黒騎士の奥義に、ブラッドウェポンと呼ばれる究極の吸収攻撃があると聞いたけど。 コレはそんな規模じゃない。スラグさんの視界に収まる“物”すべてから。 生命力が吸い取られている。 何しろ、まわりの木が、色を失って枯れ始めているからだ。 『みなさん……長くは持ちません。この隙に……はやく!』 しかし、傷ついた魔法兵団と、少ない前衛では、すこし火力が足りない。 魔法兵団が回復するのを待っては、おそらくスラグさんが持たない。 しかし、このまま攻撃を開始しても消耗戦、果てはジリ貧だ。 『 … …は無く ―― も… … は無い… …』 リンクシェルから途切れ途切れに声が聞こえる。 『― ― 常に 乾いた―― … …』 唐突な嫌な予感。空気が凍り付いているのが分かった。 『そ ……こ “世界は”――!』 それは私に限ったことではなく、この場所にいる全ての者が、硬直していた。 『我が“世界”は、螺旋に、とどまる――!』 その瞬間、クリエルさんの姿が、消えた! 痛いほどの沈黙の後、響き渡る断末魔。 一人、また一人と倒れていく。 獣人軍が叫びを上げて駆逐されていった。 そして、残り一体となった時だった。 「グァガぉゴポ……」 途端に白魔道士のクゥダフが吐血し、痙攣し始めた。 その後ろには、見慣れた赤い鬼神。 「戦場にて、目標を見失うことは敗北、ひいては死を意味する。 ……。 来世にて、教訓とするがいい」 とまとが、つぶれた、おとがした。 「う、うわぁ……俺今日は肉くいたくねぇや……」 闘将・蒼との異名もあるサーペントさんが苦い顔をして呟いた。 「ぐっ……!」 「クリエルさん!」 クリエルさんが片膝を付いて崩れ落ちた。私は、すぐに駆け寄った。 「っ……ぁ……!大丈夫です……っ……。 少し無理をしましたが、想定内です。呼吸が……難しいだけです……っ。 ものの数分で動けるようになります……っ。 それよりも……スラグは。スラグは!」 スラグさんは既に倒れ込んでいた。 と思った瞬間、スラグさんの体から煙が出始めた。 「担架を!早くして!スラグさんの皮膚が!焼け焦げてる!」 「どうなってるんだ!どうしたんだスラグさん!」 団員二人も戦闘不能になってしまったため、 私たちは一路、アウトポストに戻ることにした。
by creatle
| 2007-08-07 01:07
| 外伝:蒼き空に紅き御旗を
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