砂塵の記憶

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2007年 05月 16日

蒼き空に紅き御旗を 8

 午前11時。バルクルム砂丘アウトポスト前。





 ここは、ザルクヘイム・リージョンの中心地帯。
 ココの丁度向かいにセルビナの町があり、ブブリム半島との交易の拠点となっている。
 元々ザルクヘイムは、バストゥークの領地であったが、セルビナが自治権を確立。
 コンクェスト政策によって、バストゥークとサンドリアが互いに争って領地を奪い合う激戦区だ。
 獣人軍撲滅キャンペーンでは、ココの支配権を巡って、ルギア総大将が指揮を執って戦い、
 惜しくも支配を逃した雪辱の地でもある。

 私と、赤獅子騎士団13師団の顧問でもある、アレクさん夫妻と、スラグさん、
 それに、アレクさんの妹である、サンドラさんと、その相棒、フェイルさん計六人。
 私たちは前線基地である、アウトポストから一番離れた東部地域を担当する。

『西部地域、獣人旗ありません。中部地域の部隊と合流します』
「了解しましたトリスタンさん。東部部隊、現在移動中です」
『おっと隊長。おいらはタートルだぜ?』
「え、でも……本名じゃ……」
『おいらにゃ、まだその名……伝説の騎士の名は重いんだ。
 まぁ気にせず、タートルってよんどくれ』
「は、はい……」

 実は、13部隊には、本名で呼ばれていない者が意外と多い。
 気に入ったニックネームだったり、
 トリスタンさん、いや、タートルさんのように、
 いつかはそう呼ばれてもいいように努力している者など。
 クリエルさんも、厳密には本名ではないらしい。

 「実は、私の本名も、存在するかどうか確証はないのです。
 ミドルネームも、ファミリーネームも。何も。“私”自身の存在さえも」

 等と意味深な事を、尋ねた時には言われた。
 それが何を意味するのか。今は分からないし、それほど問題な気もしなかった。
 名前というのは、それほどまでに重く重要な物なのか。
 17年生きてきたが、未だにその重さは分からなかった。

 タートルさんの家系は、先祖代々重騎士の家系。
 重厚な鎧を身につけ、軍の先頭に立ち、絶対的な守護を与える、
 サンドリアの盾の一翼。
 トリスタン・アダマンタスは、その家系の長男。
 聡明な頭脳と技量溢れる戦闘能力で将来を有望視されていたのだったが。
 だが、パラディンの道ではなく、シーフとしての修行を開始した。
 家柄故に受ける軋轢か、名と血脈に対する自分自身の訓戒か。
 いつか、その名を名乗っても恥ずかしくないように。と。
 当然のように享受して、当然のように行使していた“自分の名前”
 大人の考えは分からないとは言いたくない。
 分かるように、私は努力しようと思っている。

「フラッドー。そのリンクパールっていうの、私もほしいな」

 突然に耳元でシャンの声が聞こえた。

「シャ、シャン!たしか執務室で留守番してるって!」
「ずっとアイテム袋の中に入ってたよ?も~う気付かないなんてニブチンネ☆」

 えいっ☆とばかりにシャンが私の頬をつつく。
 流石にこのまま戦闘になってしまったら非常にマズイ。
 敵の魔法、エアロであっても、シャンの大きさだ。
 古代魔法のトルネド並の体感が想像出来きる。

「危ないから、アウトポストに保護して貰いなさい」
「やーだよ。だってあそこにいた人たち、私たちを嫌そうな目でみるんだよ?
 私だってケアルくらい使えるんだから。それに、もう引き返せないでしょ?」

 確かに、今現在のここ、ザルクヘイムはバストゥーク支配だ。
 領地を競り合いに来た私たちを見る目は……まぁ良くはないな。
 移動しながらも、思考を巡らせる。
 連れて行った場合のメリットよりも、デメリットの方が大きすぎる。

「フラッド隊長。流石に戻るのは時間のロスです。
 仕方ありませんが、シャンを連れて行きましょう」
「う……そうですね……」

 スラグさんの一声により、認めざるを得なくなってしまった。
 遠征軍のキモは、迅速な索敵と、確実な撃破である。
 コンクェスト制覇による国益は計り知れない。
 Time is moneyとはよく言った物だ。
 早く獣人旗を探し出し、特殊部隊を撃破しなければならない。

「シャン。戦闘に入ったら、必ず敵の攻撃から十分に距離を取って戦うこと。
 どんなピンチでも、激戦区域に入らないこと。いいね?」
「はーい。わっかりましたぁ~♪」

 すると、リンクシェルから雑音が聞こえ始めた。
 耳を澄ませば、中部部隊の会話のようだ。
 だれかがスイッチを入れたままにしてる。

『……クリさん。何食べてるの?見たところクァールサンド?』
『ん?あ――コレか。弁当だ』
『あー!ずりぃー!俺も貰うっ!』
『あ、コラまて、サーペントさん!せっかくクイールが作ってくれたのに!』
『じゃぁ私プリンもらうねー』
『コトナリアさんっ!それは最後に楽しみにって、あー!!』
『べーだっ。見せびらかして独り占めしてるのが悪いのよっ』

「何やってんだかあの人たちは……」
「くっくっくっ……!仲が良くてイイじゃないかっ……!」

 スラグさんの盛大にため息に対し、アレクさんは笑いをかみ殺していた。

「フラッド~アレなに~?」

 シャンが指さした先は、ボロボロの布に、奇妙で禍々しい紋様の旗。
 そう、それこそが、探し求めていた獣人旗――!
 小隊内に緊張が走る。物陰に身を隠し、リンクシェルを起動する。
 ここは、ヤシの木が群生する区画だ。
 確かに隠れるにはうってつけであり、疎らなヤシの木は、弓の扱いも阻害しない。
 向こうも隠れているが、こちらも隠れることが出来る。
 お互いに、この状態で有利不利はない。

「全軍、聞こえますでしょうか。東部部隊フラッドです。
 MAP参照、J-6地点において、獣人旗を確認。
 特殊部隊の奇襲を警戒しつつ、集合してください」
『了解。中部部隊、西部部隊と合流完了。そちらへ向かいます』

 メビウスさんの声を確認すると、場にいる物全員、戦闘準備を開始するのだった。
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by creatle | 2007-05-16 00:32 | 外伝:蒼き空に紅き御旗を


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