砂塵の記憶

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2007年 03月 02日

蒼き空に紅き御旗を 3



「ねぇフラッド。何こそこそしてんの?」
「貴方のせいですっっっっ」






 赤獅子騎士団第13師団宿舎。
 その入り口付近まで誰にも会わずに接近することが出来た。
 エントランスの灯りは消えていて、人は居なさそうだ。
 入り口まで……あと少し……。
 3歩……。
 2歩……。
 1歩……!






 ――到着!
 なんていうか、ただ帰るだけなのに大冒険した気がするのはどうしてだろう……?

「なんか楽しいね♪洞窟探検するみたいで。小さい頃、良くやったよね?」
「こっちは情けなさで涙が出てくるよ……」

 額に手を当ててかぶりを振りかけた、その時だった。

「ほぅ。何故涙が出るのか答えて貰おうか」

 パッ!とエントランスの灯りが全て一斉に灯った。

「――ってフラッド隊長。何をしてるんですか……
あまりにもコソコソと接近してくるから賊かと思いましたよ」

 紅いガンビスン風の見慣れた服。騎士が公務の時に着る豪奢な服だ。
 金細工が施された手甲に、黒いズボン、キリっと鋭いその瞳は――

「く、クリエルさん!?
 え、い、いやぁ……!お、遅くなっちゃったから……さぁ!」

 自分で言うのも何だが、下手な言い訳だ……ホント涙出そう。
 クリエルさんは心底呆れたのか、ハァ……とため息をついた。

「普通に帰ってきてください……誰も怒りはしませんから。
 のんべぇのオヤジが朝帰りするんじゃナイんですから」

 そう言いつつも、クリエルさんは扉を開けて、中に入れてくれた。

「で、フラッドさん。その後ろに居るものはなんですか?」
「えっ――!」

 き、きた!むしろカンが鋭いクリエルさんだからこそ来ちゃった!

「え、えーっと拾って来ちゃったというかなんというか……
 出てきちゃったというか……。えーっと」
「フラッドさん……」

 がしっ!と、クリエルさんは私の両肩を掴んだ。

「産むなら相談しなさいって言ったでしょうがあああああああああ!」
「意味がわかりませんよおおおおおおおお!?」
 
 ああ……クリエルさんが大パニック起こしている……。

「アレは何なんですか!?飛んでるし!羽生えてるし!」
「私は指輪の精霊さんなのだー☆」
「喋った!?精霊!?マジで!?」
「あーもう!シャン!ヘタに混ぜ返さない!」





 で――結局この騒ぎで、宿舎のみなさんを起こしてしまいましたとさ。

 みんなを食堂に集め、とりあえず落ち着いてもらった。
 大パニックだったクリエルさんは、率先してお茶を入れている。
 でも、あの茶器、備品にはなかったはずなんだけどな。

「クリエルさん。ソレってうちにありましたっけ?」

 いつも備品のチェックをしているスラグさんがクリエルさんに尋ねた。

「えっ!?あっ……と。こ、コレは私物ですヨ……」
「なぜ動揺するのですか……別に怒りはしませんよ」
「そうですか……」

 スラグさんが目をハズしたときに、
 クリエルさんが「せーふ……」って言っていたのを
 私は聞き逃さなかった。
 でも、スラグさんの目がキラリと光った気がした。
 ツッコミを入れると、危険な香りがしそうなので回避。
 ――記憶を封印……よし。

「さて、本題に入りましょう。フラッド隊長。この子は一体……?」

 スラグさんが訝しげに私に尋ねた。
 もう、そのまま言うしかないか。

「えーっと……なんと申しましょうか。
 本日ちょっと賊を捕まえましてね……お礼として貰った指輪から出てきてしまったのです。
 指輪の精霊だと名乗りまして……三つ、願いを叶えてくれるとか」

 流石に説明不足な感じがするが、如何せん、それ以外に言いようがない。

「みんな納得してないみたいねー。よぉっし♪ここでお願い事叶えちゃうぞっ♪
 フラッド~。一つ言ってみなよ」
「そうですね……」
「ちょっと待った」

 私の思考を遮ったのは、他でもないクリエルさんだった。

「その願い事、叶えるにあたって、キミにメリットはあるのかね?」

 鋭い瞳は、先ほどの雰囲気を一蹴するほどの威力があった。
 その瞳は、物の本質を刺し射抜く視線。

「え……メリット……だ、出してくれたからお礼に……」

「それほどまでに軽い問題ではないと思うのだがね。
 考えてもみるがいい。
 魔法にしろ、現象にしろ。ヒトが起こすには代償が要る。
 魔力然り、触媒然り。つまり、願いを叶えるにはソレ相応の物が必要だ。
 キミが行使する場合、場合によっては、キミの“存在”を賭けることにならないか?
 つまり、ヘタに叶えれば、とんでもない物を代償に持って行かれるかもしれないぞ?
 あまり不確定要素を野放しにしておきたくないのだが」

 クリエルさんが私を、視線で射抜く。
 つまり、私が形式上“使役”しているため、代償が私から盗られると。

「代償……わたし、わからないよ……で、でも!
 わたし、フラッドと一緒に居たい!
 私がフラッドに喚ばれたのも、意味があることだと思うの!
 何なのかは……分からないけど……」
「ソレを言うのは私ではありませんよ……ねぇフラッドさん?」

 いきなり話を振られた。な、何を喋ればいいのさっ!?
 と、とりあえず……

「わ、私は仲間として受け入れてもいいんじゃないかなーと。
 思うんですが、いいでしょうか?」
「いいと思うよ?フラッドさんがそういうの、決定権持ってるでしょ?
 それに――」

 メンバーの古参にして私と同じ年齢。最年少団員、コトナリアさんが前に出た。
 コトナリアさんはそのままシャンに手を伸ばし、肩に乗せた。

「かわいいから許す」
「こ、コトナリアさん……?」

 クリエルさんがあっけにとられた顔をして、コトナリアさんを見ていた。

「クリエルさんも、もちろん賛成してくれるよね?」

 にっこりと。パーフェクトスマイル。
 ――だが。
 妙に部屋が静まりかえっているのはどうしてだろうか。

「い、いぇす……マム……」

 クリエルさんいろんな意味で轟沈。

「やったー!コトナリアさんっ!ありがとうだよー♪感謝だよー♪」
「いえいえー☆それじゃ、ミルファさ~ん」
「はい?どうかしました?」

 コトナリアさんは、お茶を堪能していたミスラの女性に声を掛けた。

「服、ハンカチのままじゃ……ね?
 作ってあげようかなーって。ミルファさん、お裁縫得意でしょ?」
「ええそうですね。最近課題が無くてヒマだった所です。
 素材も沢山ありますし。ふふふ。腕が鳴りますね。
 シャンちゃん……でしたよね。私の部屋でサイズを測りましょう」
「と、いうわけで、みんな覗いちゃダメよ?オヤスミなさい~」

 シャンと、コトナリアさん、楽しげなミルファさんは食堂を意気揚々と出て行った。

「……」
「……」
「と、というわけで、みなさんこれから、シャンもヨロシク……」

 団員はみんな、頷くしかなかった。
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by creatle | 2007-03-02 01:22 | 外伝:蒼き空に紅き御旗を


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