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砂塵の記憶

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2007年 01月 12日

外伝~潮騒の鎮魂歌~17

 以下、目の院より持ち出しを禁ずる。
 ――――年、3月28日 トスカ・ポリカ







 10月21日
 先週発生し、死者112名を出した、ティンクルスター号遭難事件で、
 遭難の原因となった物がウィンダスへ持ち込まれた。
 生命体感知コアと呼ばれる物で、生命力が低下した生命に対し、
 自動的に追尾する能力が在る探査装置である。
 だが、いまだこの装置には謎が多く、
 現在、魔法学校の教諭陣と共に、解析を急いでいる。

 10月27日
 生命体感知コアに関して、恐るべき事実が判明。
 ウィンダスで禁止されている魔法、死霊術による精製であることが判明した。
 ネクロマンシーとも言われるその術は、死者の魂や肉体を使い、魔法を為す。
 外法と一般的に言われる魔術である。
 このコアは、事実、ヒトの肉体と魂が形を変えられて精製された物であると
 魔法学校教諭のひとり、禁呪法を研究しているマルト・レムニロが結論付けた。
 誰が、どうしてこのようなものを精製、持ち込んだか。
 ウィンダス特捜部は、軍の入手ルートを徹底的に洗い出す方針だ。

 11月10日
 友人に会いに行く。
 そう書き置きを残し、一人の政府関係者が姿をくらました。
 ラクチェ政務次官が突然行方をくらまし、紙上を賑わせた。
 関係者筋の話では、前後にコンタクトを取った人物もおらず、
 突然にして“消えてしまった”のだそうだ。
 ラクチェ政務次官と言えば、
 先のティンクルスター号遭難事件の事後処理を担当していた。
 もしかしたら万が一の事態があるかもしれない。
 政府関係者が突然に消えるという異例の事態に、
 ウィンダス特捜部は事故と事件の両面から捜査を進めている。

 11月13日
 ラクチェ政務次官が帰還した。
 全く何も無かったかのように普通に出勤し、政務をこなしている。
 空白の3日間、何があったのか。
 ラクチェ政務次官はこう答えている。
「個人のプライバシーに関わるため、コメントは差し控えたい」
 友人、というキーワードが鍵を握っていると睨んだ特捜部は
 ラクチェ政務次官の足跡を探る事を秘密裏に決定した。


 11月21日
 ラクチェ政務次官、また失踪。
 友人というキーワードから、ティンクルスター号事件の時に居合わせた、
 赤獅子騎士団13師団のメンバーに関連が在ると睨んだ特捜部はサンドリアへ飛んだ。
 赤獅子騎士団13師団の顧問、
 アレクサンドライト卿との交流が在った事は事前に調査済みだ。
 道中、マウラとセルビナで、身分の高そうな二人組のミスラを見たという証言を得る。
 片方は政務次官として、もう片方が友人だろうか。
 サンドリアに辿り着くと、北サンドリア教会は人払いされていた。
 いつもは礼拝に訪れる信者で溢れる教会が、ひっそりと静まりかえっていた。
 この不気味な事態に、絶対に何かある、と、特捜部はサンドリアに留まった。

 12月3日
 ラクチェ政務次官の居場所をとうとう突き止めた。
 そう、例の教会だったのだ。
 特捜部は警護兵をくぐり抜け、教会に突入した。
 そしてそこで見た物は――!




 結婚式の打ち合わせであった。
 そこには、赤獅子騎士団の面々と、ラクチェ政務次官の姿があった。
 そして
 祭壇の前にいる二人組の男女が目に入った。
 男は騎士の正装、女は清楚なドレス姿のミスラであった。 

 呆れた顔をしたラクチェ政務次官が特捜部に説明してくれた。
 友人の結婚式に参列するのだと。
 だが、公務に出ていては、出席するのは不可能だった為、強硬手段に出たというのだ。
 一回目の失踪は、花嫁を母親に会わせる為。
 二回目は、結婚式の打ち合わせと準備の為。
「悪いな。もう一回姿をくらますけど、ソレは見逃してくれ。な☆」
 特捜部は頷く他無かった。

 12月24日
 特捜部はサンドリアに居た。
 ドレッド・ソーディアンさんと、ナーシャ・ナクラビチュさんの結婚式である。
 サンドリア式の結婚式は、武器による誓いが在るのだが。
 ドレッドさんは魔術刻印がびっしりと刻まれた両手剣。
 ナーシャさんは、竪琴にて誓いを為した。
 誓いは形式的な物ではなく。
 お互いが、お互いを守り抜こうと、
 如何なる困難の中でも、生き抜いていこうという誓いであった。
 私はこの後、ナーシャさんが、彼の事件の唯一の生存者であることを知った。
 だからこそ、こういう誓いを、真に誓うことが出来るのであろう。

 そして、新郎新婦が教会から外に出た、その時だった。
 晴天の空から雪が舞い降りた。
 特に気温は下がっていない。いつも通りの空だった筈なのに。
 太陽の光が雪に辺り、キラキラと輝きながら――
 まるで二人だけの為に降っているようだった。
 ナーシャさんが唄を歌い始めた。
 ドレッドさんも、併せて歌い始めた。
 歌詞を聴き取れば、何となく、雪の正体が分かった気がした。
 手向けと。感謝と。未来と。幸せを。
 この風景を曲で表現するならば、おそらく賛美歌や聖譚曲だろう。
 唄に疎い私であるが、風景と唄は、間違いなく、私の心に刻まれた。
 聖なる日には奇跡が起きる。
 柄にもなく、そう思ったのだった。


 2月1日。
 帰還したラクチェ政務次官から衝撃の言葉が飛び出した。
 ヒューイレット・パレイ政務官を弾劾するというのだ。
 罪状は、禁止されている死霊術行使による罪。
 例の生命体感知コアに彼が関与しているというのだ。
 証言者として、アレクサンドライト卿と、
 ナーシャ・N・ソーディアンさんを既に法廷に立たせる用意があるという。
 ヒューイレット政務官はティンクルスター号の建造の責任者であり、
 遭難後、すぐに二番艦の製造に取りかかっていた事実がある。
 二番艦にも、生命体感知コアが取り付けられていた事が公になっており、
 ヒューイレット政務官は窮地に立たされたのではないかと噂されている。


 2月22日
 ヒューイレット・パレイ政務官失脚。
 ウィンダス法廷で裁判官を務めたクピピはこう語った。

「ヒューイレットはロランベリー耕地で向こう20年は労働の刑なの。
 ウィンダスには死刑がないから遺族の意向には添えなかったの。
 でもでもロランベリー一杯できっとウィンダスもホクホクなのー」

 それ貴女が食べるんじゃ……と言いかけた所にハンマーで殴られた。
 どうやらまた何かあるらしい。困った物だ。


 3月21日
 ソーディアン家の奥方、ご懐妊のニュースが飛び込んできた。
 奥方と言えば、ナーシャさんのことであろう。
 ソーディアン家はサンドリアの中でも騎士の中の騎士、さらには英雄である。
 サンドリア国内ではお祭りムードであると特捜部は伝えた。
 私も、何かを贈っておこうと思う。
 さて、何がいいか……




 『――ウィンダス言の葉――12月号

 遠い国へ嫁いでいく娘へ。
 いつも、ヒトの不幸を嫌って、平和を夢見た貴女が。
 しっかりと力と向き合って、
 ソレでも夢を見られることを貴女が知ったこと。
 ミスラの教えじゃないけれど。
 お母さんはとても嬉しく思います。
 「戦うことと、争うことは、違うんだね」と。
 本当の意味で、強くなれた貴女を見たときは、思わず泣いてしまいました。
 そんな私を、しっかりとした笑顔で、抱き留めてくれましたね。
 その顔が出来るなら、お母さんは胸を張って送り出せます。
 お幸せにね。



 追伸。子供が生まれたら、ちゃんと一度帰ってきなさいよ。
                                  アルテミス・ナクラビチュ』









                                 潮騒の鎮魂歌――END……?

by creatle | 2007-01-12 03:01 | 外伝:潮騒の鎮魂歌


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