2006年 06月 21日
岩山の上に、弓兵を配置する。その後に白魔道士、黒魔道士を配置。攪乱と支援攻撃を担当してもらう。 ここは岩の丘陵が二つ、門の様に並んだ地形で、隠匿と射撃にはもってこいの地形だ。 ただそれは上を取った場合だ。 下を通る場合は、門を通らねば通行は不可能で、歩行可能な道幅が狭い。 4ガルカ分の通行路は、クゥダフのような重装甲の甲羅と横幅の大きい体格が、一度に通れる数をさらに制限する。 だが、今回は上からの集中射撃による撃破ではない。 射撃部隊には、クゥダフ軍隊列の後方を狙ってもらう。 今までの行進パターンを見れば、 前が重装甲タイプ、 中が暗黒騎士や戦士の攻撃型、 後が白魔道士や赤魔道士といった回復・補給・補助部隊が配置されている。 こちらは、行軍の回復手段を全て遮断し、正面から重装甲の隊列を崩し、中の薄くなった防御を突く。 そして、ベドー本陣からの隠匿に優れた移動、後方に指揮官クラスと予想すると。 恐らくは――。 向こうの指揮官は“トパーズ“の階級名を冠した白魔道士。 恐らく、成長し続ける彼ら獣人を思えば、階級こそ絶対な力の差。統制、伝達速度そして。 ――個人の戦闘能力の高さ。 あの大きな体格で、尋常ではないスピードと体捌きを誇る。 いかに白魔道士と言えども、一級魔術師の魔力と熟練兵ほどの身体能力を併せ持つ。 『隊長。奴ら本当に来ました。現在前方約750kIm(7.5km)を進行中』 魔法式通信宝石、リンクシェルからカルスの声が聞こえる。 遠くを見れば、月光に当り、丸みを帯びた蒼光が数多く反射する。 黒鉄複合装甲である、甲羅形の鎧が月夜に浮かぶ。 間違いなく、クゥダフ軍の隊列だ。 しかしまだ、狭い通路には入っていない。もう少しだ。 「まだ撃つな。合図するまで待て」 緊張が走る。幾度と無く感じた戦場の雰囲気。 だが同時に、我々は幾度と無く不敗。 必ず……勝つ! クゥダフ行軍が隊列を変更し始めた。 道が狭いため、6列縦隊から3列縦隊へ組みなおすようだ。 前との間隔が狭まり、蒼光の密度が増す。 行進しつつ、編隊行動を続けるクゥダフ軍。相当指揮能力の高い軍師が付いていることが伺える。 「トパーズクゥダフが指揮。というのも外れではないな」 此れほどまでの大編成を纏め上げるのは相当のカリスマと威厳が必要だ。 自分の部隊がああだったから。より痛感する。 狭い道に全てのクゥダフ行軍が侵入。よし……そろそろだ。 「カルス。射程距離まであとどれくらいだ」 『ここからでも当てる自信はあります。最後列だって当てて見せますよ』 誇張ではない。今までの実戦経験とカンから来る絶対の自信。 ならば信じよう。私も最大限の力を出す。 「全弓兵、および黒魔道士に告ぐ。カルスは当てられると言った。遅れを取るものは独りもいないな」 雰囲気で皆が頷いた。流石は熟練兵。既に迷いも戸惑いも無い。 「では……」 私が高台から駆け下りると、前衛戦力全員が私に続いた。 「撃 ち 方 、 始 め!」
by creatle
| 2006-06-21 13:30
| 外伝:砂塵の記憶
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