2007年 05月 06日
午前8時。南サンドリア西門。 そこには、かつて無いほどの戦力が集結していた……。 今日から遠征軍が始まる。 遠征軍とは、コンクェスト政策の一環で、 各地に点在する獣人特殊部隊を撃破し、戦力を削ぐのが目的だ。 もちろん、撃破すれば、その地域の支配権を強化することが出来るわけで。 もっぱら、リージョン支配地を増やす術として、遠征軍が利用される。 既に食糧はレンブロワ食料品店から送られ、分配も済ませてある。 そろそろ点呼を取ろうかと言うところで、名を呼ばれた。 「よぉ少年。そっちは何処担当だい?俺たちはデルフラントへ派遣なんだが」 「アイリシュさんおはようございます。私たちはザルクヘイムへ行きますよ」 赤獅子騎士団第12師団(イフリート隊)隊長、アイリシュ・ダリアさんだ。 女性みたいな名前だが意外と、お髭が逞しいおじさまだ。 隊のナンバーが近く、困ったときなど、親切に面倒を見てくれる。 アイリシュさんには私と同じ歳の息子さんがいるそうで、他人とは思えないそうだ。 「そうかそうか。ザルクか。ルギア総大将と、草の根の活動の拠点だったな。 今期も落としていたか……。 少年。たのんだぞ。俺たちの思い出の地。きっと奪回してくれ」 「ええ。そちらも、御武運を」 アイリシュさんはニヤリと笑うと、そのまま自分の部隊へと足を進めた。 アイリシュさんは、私のことを「少年」と呼ぶが…… なんというか、嫌な感じはしない。そう呼びながらも、 私を13師団の隊長として認めてくれているのを、私は知っている。 とりあえず点呼を取った。 やはり出撃可能なのは、18人だった。 行き先と部隊編成を伝え、神殿騎士団のハイガードに準備完了の旨を伝えた。 神殿騎士は、私たちを前に、説明を始めた。 「では、ディアボロス隊はザルクヘイムへの遠征となる。 各自、遠征資格書は持っているな? これより、現地へとテレポをかける。 期間は、本日より1週間。 目標は、獣人特殊部隊の殲滅、及び獣人補給資源の奪取だ。 では、健闘を祈る」 程なくして、私たち全員に、ハイガードがテレポの魔法を掛けた。 体が光に包まれ、浮き上がるような感覚に切り替わる。 しかし毎度の事ながら……! 飛ぶ→落ちる。コレ世界の摂理アルネ。 とばかりに、怪しい言語が頭をよぎる。 気付くとそこは白い砂浜が美しいバルクルム砂丘。 「うぷ……酔った……」 「ま、毎度の事ながら感覚がおかしくなりますね……」 何とかおかしくなる意識を整え、整列。 「では、コレより遠征軍を開始します。 メビウスさんと、コトナリアさんには、あらかじめ調査ポイントを指示してあります。 小隊ずつで、探索を開始してください。 獣人旗を見つけたら、速やかにリンクパールを使用して連絡を。 絶対に触れたりしないでください。 呪いとともに獣人特殊部隊から総攻撃をくらいますから。 あと、極端に重い装備は、あらかじめ規定の装備へ。 呪いで、身動き取れなくなったら死にますからね」 獣人旗には、呪いが仕込まれていて、能力が制限される。 重い鎧や、武器は持つことが出来なくなるくらいの強力なものだ。 特殊部隊は、その呪いが掛かっている者しか攻撃できないが、 掛かっていない者からは攻撃を受けないという特性を持つ。 どんなに努力しても魔法すら発動せず、殴りかかっても途中で阻害される。 つまり、甘んじて呪いを受けなければ行けないのだ。 「では、出撃!」 『了解!』 この日、全部隊による一斉の遠征軍が幕を開けた。
by creatle
| 2007-05-06 02:25
| 外伝:蒼き空に紅き御旗を
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