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砂塵の記憶

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2006年 07月 14日

外伝~潮騒の鎮魂歌~1

流れ着いてきたのは、ミスラの女性。
女性……というか女の子というか……。
服は長めのローブを着ていた。
着替えは流石にお袋が全部やったぞ?
俺は……追い出された挙句に、彼女の看病を言い渡されましたとさ!
明日は航海だぞ……用意だってしてねえのに……。

そして、そろそろ夕飯か。という時間だった。





「目が覚めたか?」
「ぁ……」

 どうやら目が覚めたようだ。
 さほど水は飲んでおらず、気絶したような感じで流れ着いていた。
 ミスラの彼女は、ぼぉ……っとした表情で俺を見ていた。

「あ……ぇ……っと。ここは……」
「セルビナ。んで俺んち。
 俺はドレッド。まぁ怪しいもんじゃねぇ。ただの一般市民だ。
 でもどうしたんだ?船が遭難でもしたか?」

 尋ねると、彼女は考えるような仕草をして、首をかしげる。

「どうした?」
「え……えと……わからないんです」
「あ……あーっと。自分の名前も?」
「い、いえ!わかります!ナーシャって言います。
 ウィンダスの造船技師です!
 でも……何があってここに居るのか……わからないんです」

 軽度の記憶障害……か。
 しかし、目立った外傷もほとんど無い。
 海に落ちて流れ着いたか、はたまた船が難破して流されたか。

「んー……。
 んで、どうする?ブブリム半島のマウラに行く連絡船は出てるけど。
 なんだったらウィンダスまで届けてやってもいいぜ?」

 まぁウィンダス出身だって言うんだから、国へ帰ろうとするだろう。

「い、いえ……なんでこうなったのか……探ってみたいと思います……。
 気になるじゃないですか。もし、大事なことでここにきたとしたら……。
 それに、国から出たの、生まれて初めてなんです。
 船は造ったことはありますが、
 乗って何処かへ行ったことはなかったんです」

 探究心旺盛というか、それともなんというのか。

「まぁ……なんだ。ってことは、どっか泊まるあてでもあるのか?」

 そう尋ねると、ナーシャはピシッと固まった。

「お金がありませぇん……」

 瞳に涙を一杯溜めて俺にそう告げた。

「あー……はいはい。んじゃ、しばらくここにいな。
 明日から一週間、俺この家に居ないから。この部屋を使え。
 親父とお袋はすぐに了承してくれるはずだ。何かと世話焼きだからな」

 言ってしまえば、この町全部そうなんだけどな。
 と心の中で付け足した。

「でも、明日から居ないって……お仕事なんですか?」
「ああそうだ。漁師だからな。明日から1週間航海して、外洋に出て帰ってくる」

 ナーシャがまた考える仕草をし、俺の目を覗き込むように顔を近づけた。

「ちょっ!近い!顔!」
「私も連れてってください!恩も返したいですし。
 わ、私、船のエンジンとかのメンテナンスも出来ます!
 それに……見てみたいんです。
 私達が造った船が、どうやって使われて、どうやって役に立ってるのか。
 わ、私の事は修理道具箱だと思って持っていってくださいっ!」

 なんか一気に喋る娘だなぁ……テンションも高いし。

「ドレッド!悩むこたぁねぇじゃんか!
 可愛い娘は傍に置け!迷うな。愛でろ愛でろ愛でろ!
 俺もかあさんをそうやって射止めたぞ!」
「おやじ……何時の間に入ってきやがった……!」

 真後ろに居たのは髭面のハイテンション恰幅親父。
 俺の親父だ。

「目が覚めたか?辺りだな」
「最初っからじゃねーか!」
 
 サムズアップしながら輝かしい歯を見せる親父に叫ぶ。
 その様子を、ナーシャは面白い物でも見るように目を輝かせて見ていた。

「仲、よろしいんですね」
「冗談言うなっ!」
「いやー自慢の息子だぞ?笑えるくらいにな。ガーハハハハハ!」
「どっちの意味だゴルァァァ!」

 大笑いしながら親父は出て行った。
 あーもう。とりあえず明日の準備をしよう……。

「明日の準備ですか?手伝いますっ!」
「あ……あぁ……」

 何時の間にやら、連れて行くことになってしまった……。

by creatle | 2006-07-14 02:46 | 外伝:潮騒の鎮魂歌


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