砂塵の記憶

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2012年 08月 03日

蒼き空に紅き御旗を 27

「こちらリュウ。ちょいと厄介な事になってるね。
 明日朝に、本陣へバストゥーク隊とグラハム部隊が侵攻するっていう情報が来た。
 グラハムがしびれ切らして力ずくで奪う気でいるみたいだね。
 今ならバストゥーク隊の力も借りられるし、勝負に出たかな。」

 リュウさんの報告に、室内がざわめいた。
 しかしアイーシャさんとスラグさんは冷静に、机に向かってなにやら作業をしていた。





「しかし、ワタシが解せないのはクリエルさんの行動だね。
 もっと手早い手段があると思うんだけど。
 そこまでつかんでるなら、出るとこ出ればすぐだろうに。
 しかもここまで厄介な事態になるなんて……もうどうしろと」

 アイーシャさんがぽりぽりと後ろ頭を書きながら、地図の方になにやら書き込んでいく。
 監視塔あたりに20と赤く書き込み、矢印を引っ張ってラングモント峠方面へ。

「状況証拠は十分ですが、物的証拠がありません。事を起こすにしても弱すぎます。
 今回のクリエルさんの作戦は、“侵入出来ないなら招待されよう”ですから。
 直に探して物的証拠を取り押さえる気でしょうね。どうやるか知りませんが。
 ここまで厄介になると味方のままなのか敵になったのかもわかりませんね。
 確かここに青30でしたね」

 スラグさんが西ロンフォールと東ロンフォールの連絡道あたりに丸を書いて30と中に書いた。

「そういう考えしちゃうのがクリさんだね。
 割と逆さ見の力業っていうか逆転の突破口っていうか。ありゃ癖なのかね。
 あ、南サンドリア東出口に緑35ね」

 スラグさんは頷くと、南サンドリア出口エリアに大きく緑色で35と書いた。
 どうやら地図上における戦力図のようだ。
 赤が我々赤獅子騎士団戦力。現在20名の戦力。
 青がクリエルさん率いるバストゥーク軍選抜隊。おそらく兵力30名。
 緑がアシュレイさん率いるグラハム氏私設部隊。おそらく兵力35名。

「はいはいっ。それじゃ明日のための作戦会議始めますよっ」

 アイーシャさんの号令に一同が机を囲んだ。

「では先ず最初に。今回の勝利条件はフラッドさんがグラハム氏に捕まらないこと。
 これさえ達成されなければ我々の勝ち。
 しかしテレポは不可。先々回り込まれてる可能性もあるからね。
 どうやら夜の会談でこっちに侵攻するっていう結果になった状況らしいね。
 さらに、相手側の戦力は、
アシュレイ率いるグラハム私設部隊。正直あんまり強くない。
 ただ、隊長アシュレイだけは別格。アレ一人でこっち数人と互角くらいのバケモノだ。
 ラドル隊長……つーかクリさん率いるバストゥーク選抜部隊。
 近接戦部隊は数は居ないが質が一級品。なにせ現役の正規精鋭部隊だからね。
 しかも遠距離攻撃部隊が豊富で火力が高い。狩人と黒魔道士のレベルが高い高い。
 正面からの激突は兵力数的にも質的にも危険すぎる。ってので逃げの一手を使う。
 クリさんは味方である可能性は高いけど、今回は完全に信用することが出来ない。
 よって、最悪の可能性を考慮して敵として考えた上で今作戦を立案しましたよっと。」

 はいっ、とコトナリアさんが挙手をした。

「スラグさんの昨日の話だと、クリエルさんとアシュレイさんは味方だって……。
 言ってなかったっけ?」

 うむ。とアイーシャが一度頷いて、青30を指さした。

「信用はしたいんだけどね。
 今回のバストゥーク隊、クリさん一人で動かしていれば信用したんだけど、
 アスタル、バルディアスの二大巨頭が最大階級として存在する。
 それ故に、クリさんの意志で動いていない可能性もあるわけさ。
 クリさんは味方として動いていたとしても、本隊がそうだとは限らない」

 難しい顔をしたアイーシャの返答に、スラグさんがため息をついた。

「今回、クリエルさんの話では、傭兵部隊を使用した偽装使節団の予定だったんですが。
 いつの間にか正規兵、しかも、本物の軍上級士官がついています。
 特にクリエルさんの想定していた階級よりもさらに上の者がいるのがマズすぎるのです。
 アスタル、バルディアス両名は、現場に出る軍人階級の中では最上級です。」

 ターリが続いて挙手をした。

「それじゃぁ、アシュレイ軍勢も向こうの協力者である以上、味方とは断定できないって
 そういうことなん?」

「はいターリさん正解。
 それに、味方として見ていて合流してみたら正面決戦余裕でしたとか笑えなす。
 今回はバストゥーク軍勢とアシュレイ軍勢まとめて相手とか不可能す」

 はい。それじゃ地図みてねーと。軽く声を掛けたアイーシャさんが赤20に指を指した。

「それではグッキー君。今回の我々の勝利条件はなにかね?」
「フラッド隊長を敵に確保されない事。ですか」

 突然の問いにもよどむことなくグッキーさんが答えた。

「おーけい。というわけで、“戦闘に”勝つ戦術は要らないのですよ。
 夜明けと共に、監視塔からまっすぐラングモント峠前まで行きます。

 バストゥーク軍勢は索敵がてら、東ロンフォールの底を掬うように移動、
 監視塔までたどり着いて、我々を追いかけてくるはず。

 アシュレイ軍勢は多分まっすぐ監視塔にくるか、
 あるいはバストゥーク軍と合流して追いかけてくるはず。
 先回りは多分しない。数の優位性が確実なら、必ず合流してくる。
 個人の優位性はこちらに分があるからね。アシュレイだけ別格だけど、
 一人抜くくらいなら出来る。

 最悪、フラッドさんだけラングモント峠に逃がしてしまえばいいのだから。
 うまく峠前に陣取れたら、あとはアシュレイ軍を迎え撃ち、バストゥーク軍の出方を見る。
 もしかしたら、クリさんが味方である可能性も出ているわけだからね。
 敵のままなら、すぐにフラッドさんをラングモント峠に逃がし、我々は防衛戦。
 地形効果もあって、かなり粘れるはず」

「んーでも、それだとじり貧じゃない?
 突破されてフラッドさん確保されたら意味がなくないかしら?」

 ジェイトンさんが心配そうな声を上げる。まぁ確かに、これでは死にに行くようなものだ。

「だいじょーぶ!そのために今回、強力な助っ人を用意しています。
 彼らの到着、つまりはタイムアップまで持ちきれば我らの勝利す」

 ぐっと拳を握ってアイーシャさんが立ち上がる。

「増援……ねぇ。居たかしら。私たちに協力してくれそうな人たちって」

 ジェイトンさんが不安げにこぼした。
 確かに思いつく限りでは……いないような。

「ああ。皆さんと面識のないヤツらです。
 かなり変わり者で……まぁいろいろとあって拾ったのですよ」

 スラグさんがこめかみを押さえながらう~んと呻いた。

「あなたの拾ったは大体曰くがありますからね……何も無ければいいのですが」

「まぁまぁ信用してください。
 はっきり言って……ヤツラはすげぇぜ……」
「どういう意味で凄いのかは聞かないでおきますね」

 あーそういえばアイーシャさん絡みの傭兵方って一癖も二癖もありますね。
 ことある毎に行方不明になる戦士さんとかタルタルマニアなガルカさんとか。
 ただ、実力は異常なほど高い事が多いのでここは黙っておきますか。

「さて、といったところで作戦は以上だけど、何か質問はあるかな?」

 するとジェイトンさんがすっと手を挙げた。

「戦闘開始の基準はあるのかしら?それとも堅守後攻でまず先制攻撃させるのかしら?」

 今回はおそらく専守防衛タイプの作戦だ。つまりは。

「こちらからの攻撃は無しでしょう。今回はライン防衛が優先です。
 逆に、こちらから仕掛けずに如何に戦闘開始を延ばせるかがカギでしょう」
「いえす。フラッドさん流石です。できれば戦闘開始を延ばしたいので、
 こちらからの攻撃は無しにしてほしいです」

 ジェイトンさんは頷いた。

「よっし。それでは解散!精霊時計で5時半に出ますので、それまで体を休めて。」

 全員が一斉に敬礼し、この場は解散となった。
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by creatle | 2012-08-03 04:03 | 外伝:蒼き空に紅き御旗を


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